URI Quintet中国遠征1回目

ブログを書かなくなって随分久しい。ライブのときなどに時々読んで下さっていた方や友人などからお叱りを受けつつも時間と精神的ゆとりの問題でなかなか書けなかった。(どうもスミマセン)途中演奏の旅も多かったし、印象に残るものも沢山あってネタというのには事欠かなかったのだけど、書かなくなったらズルズルで来てしまった。生活の中で文章が書けるくらいのゆとりは持たないとなあ・・。
さて、相棒のギタリストである山野修作から9月のある日に電話があった。なんとスポンサーがつくので僕がリーダーのクインテットで中国へツアーしないかと言うことだ。海外と言うのはともかく、自分のクインテットでの興行を今後積極的に考えないといけないと思っていたところだったので、とにかく前向きに検討しようと言うことにして計画を練る事にした。

僕が主催する「Mamoru Kubo Quintet」は、もう7-8年前だったか、テナーサックスの吉岡真氏とアコースティックだけどハードなジャズをやろうと編成したバンドで、ちょうど脱サラしてトロンボーンばっかりで食い始めた前後だった事もあり、かなりの気合と吉岡氏の献身的な協力で始まったものの、5人所帯というマネージメントや音楽的なパフォーマンスの難しさもあって長年放置状態にあったバンドだ。今年に入ってから再構成して再開しようと言うことになり、6月に博多のリバーサイドでジャズドラマー兼アレンジャーの日高潤也の参加を受けて再結成した。

その日高潤也は都合でツアー参加が叶わなくなったために急遽ドラマーは長年の付き合いで知名度もあるベテランの成重潤蒔にお願いした。他はアレンジ兼テナーサックス吉岡真、ギター山野修作、そして若手だがすっかり福岡での認知度も上がってきた丹羽肇門下のベーシスト小牧良平、それに僕の5人だ。2ヶ月と言う直前のブッキングで、かつ4日間の長期間拘束にも関わらず1名を除いてレギュラーメンバーで組めたのは奇跡的であり幸運だった。
僕は中国は過去に何度か行っており、他のメンバーも殆どが海外への音楽修行の経験があるために行くことについてあまり不安は無かったが、バンドで興行を行うとなれば、契約などのマネージメントをはじめ旅程の手配など沢山の雑務と打ち合わせを行わなければいけない、しかし僕は長崎にて柄にもないコンピュータの講師業を行っているために、基本的にウィークデーは動けないのだ。だから行けなくなった日高潤也にプロデューサーをお願いした。打ち合わせは本当に驚くほど上手くいき、もっとも深刻な問題だったコントラバスの搬送についても懇意にさせてもらっているベース奏者の石崎律郎氏が快く貸してくださるなど数々の幸運が重なって興行場所が海外であるというリスクを殆ど解決して行うことが出来た。

さて、殆どのメンバーが前日まで演奏があったので事前のリハーサルと打ち合わせが出来なかった事もあって深夜0時から早朝4時まで福岡市内でリハーサルを行い、3時間後の午前7時には空港に入った。前日からの夜通しの演奏でメンバー一同眠気+倦怠感と戦いつつ、国際便とは思えない座席の狭さが名高い(はっきり言って僕より大柄な人間は乗れないと思う・・)中国東方航空にて上海に向かう。
目的地の杭州市は浙江省の州都であり上海から高速道路で3時間ちょっと離れたところにある。非常に歴史のある街で古来より経済文化が発達し「上に天堂あり下に蘇杭あり」と歌われたほどの中国八大古都のひとつであり、日本で言うと京都のようなイメージだが人口は600万人以上だというからやっぱり中国と言うところはスケールが大きい。

さて、上海に着いて到着ゲートを出て暫く「URI QUINTET クボサマ」と書いた紙を持つ男を発見する。しかし予定に反して迎えの車が一台しか来なかったため、運転手兼通訳の中国人らしからぬ陽気な男「農」さんに急遽お願いしてタクシーを捕まえる。タクシーには「この車についてくる様に!」と指示し僕とドラマーの成重氏を除いた3名に乗ってもらいスタートするやタクシーが居ない!!どうやらさっさと先に行ってしまったようだ。コントラバスの巨大なケースを積み込んだワゴンで追いかけることにした。
僕「あのさ、タクシーの運転手って行き先知ってるの?」
農さん「知らないよ」
僕「タクシー運転手って英語通じないよね・・」
農さん「そうね・・」
僕「いったいどこに向かってるのかねぇ・・」
農さん「・・・」
さっそく、空港から中国の恐ろしさに遭遇してしまった。
ほとんど暴走状態の楽器満載ワゴン車は、程なくこれまた暴走状態のタクシーを前方に発見する。それは某公道カーレース映画のような状態で片側4車線の道路を右に左に他車を抜き去り走って行くのだ。一体何が中国人タクシー運転手にそういう謎の行動を起こさせるのが不明だが、とにかく何とか前につけてタクシーを止め電話連絡がつくように運転手の名刺をゲットする。そんなことがあって約3時間半ようやく徹夜明けの疲れで眠れたころに杭州の宿泊先である「百合花飯店」(Lily Hotel)に到着する。
今回のスポンサーさんとお会いし食事に招待されて翌日からの演奏について現場の状況を掴もうといろいろ聞いてみるが念のため、ギターの山野修作と営業中の状態を下見しに行くことにした。
現地時間夜10時半、もっとも忙しい時間であろう時に、翌日からの演奏会場であるライブバー「旅行者」に訪れる。事前に予約していたにも関わらず約150席がほぼ満席で座ることすら出来ない。店内はものすごい活気と熱気で客の声が大きいからものすごい騒音に聞こえる。(中国の人は普段話す声も大きいのだ)山野君とちょっとあっけにとられてマスターに挨拶だけをして店を後にするが、アコースティックなジャズをじっくり聴かせるのは無理だろうという事になって、演出の作戦を立てることにした。(つづく)