ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」

ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版

ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版

東京からの帰り道に17時間半にも及ぶバスの中のストレスと禁煙に対抗すべく、新宿の書店で本を探すことにした。1週間今までの人生で最も勉強したといっていいほどの生活だったのでコンピュータとかセキュリティの技術書なんて読む気にもならず、世界的なベストセラーでいろいろと物議を醸し出しているダン・ブラウンダ・ヴィンチ・コード」を読むことにした。
読む前の予備知識としてはローマカトリック教会レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画に隠された謎、秘密結社とかいうあたりを繋げたミステリー小説といった感じだったのだけど、本当にその通りの内容だった。
基本的な流れとしては、そのストーリーや、ドンデン返しなどありきたりのものだという印象だったけど、そういうミステリー小説としては当たり前な流れの中に暗号解読や、キリスト教の暗部と秘密結社といった歴史ミステリーなどを絡めることで面白く演出してあるという感じを受けた。
しかし何よりこの小説が興味深く長くベストセラーだった理由は小説の前書きにある「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、全て事実に基づいている」としている事だろう。
先日メディアでも大きく報道された原始キリスト教を知る上での新たな大発見「ユダの福音書」写本が見つかった件でも、これまでに発見されて研究されている「死海文書」「ナグ・ハマディ文書」などのグノーシス系(だよね)のキリスト教の文書についても、いろんな資料が発見されて原始キリスト教の輪郭が判るにつれ、ローマ・カトリック教会が2000年近くもかかって作ってきたであろう教義や信仰対象が崩れつつあるように感じる。
一方でインターネットを始めとした情報ソースのボーダレスと伝播の高速化も手伝って今や秘密結社の何たるかも秘密でなくなってきたきらいもある。だからこの手の本が出てくるのもむしろ遅すぎたといった感じすらあるのだけど、映画「パッション」の時と同じように宗教関係者は反発しているようだ。(そういうサイトは検索するとワラワラでてくる)カトリック教会の一大組織オプス・デイなんかは実名で、かつ悪者扱いなんで気の毒ですらあるけどね・・。
信者のはしくれとして思ったことを言えば、現代の信仰と言うのは聖書の内容の正しさよりも伝えていることの、すなわち精神性における共感によって成り立つものだと思うのでイエス・キリストに妻がいたとしても、かつてのカトリック教会が魔女狩りと称して300万人も虐殺していようとも現代において表面上それが信仰に値すべきものなら成立すると思うのだけどね。
だって、聖書の全てを真実として信じろというのなら、生物学も物理学も天文学も、そして社会的な倫理観もめちゃめちゃになってしまうよな。
そういう理解では長崎にいくつもあるカトリック系の高校とか大学の受験すら通らないよね・・あはは。
なんか話がそれたけど、少なくともコンピュータとか不道徳とかそういうのが渦巻く乾燥した社会において宗教的なことや芸術や歴史に興味を向けさせるきっかけとして、この本は良いかもと思った。